これまで読んだ本の中で、武術と舞踊の身体感覚をつなぐヒントがたくさん詰まっていたのが、JIDAIさんの著書
『筋力を越えた張力で動く!』です。
日本舞踊や舞台での“見せ方”を軸に書かれているこの本ですが、
武術を学ぶ身としても、とても参考になる内容でした。
身体の内側で「張力」をつくるということ
この本のテーマは「張力(テンション)」という独特な体の使い方。
筋力で押したり引いたりするのではなく、身体の中に“空間”を作って、そこに張りを通して動いていくというアプローチです。
たとえば、関節に空間をつくる。
関節のすき間をほんの少し開けるような意識で、全体の姿勢を整える。
すると身体の軸がスッと通り、筋肉をガチガチに使わなくても安定するような感覚が生まれるのです。
これがまさに、武術でよく言われる「つながる」感覚。
手・肘・肩・胴・腰・足がひとつの線で結ばれるような動きが、張力によって導かれていく。
読んでいて、頭ではわかっていたはずの感覚が「これかもしれない」とストンと腑に落ちました。
舞台と武術に通じる身体操作
JIDAIさんはマイムアーティスト。舞台表現に関わるお仕事をされている方で、
ダンサーや俳優の体の“見せ方”を深く研究されています。
でも、そこで語られる「骨格をいかに開くか」 「エネルギーをどう伝えるか」といった内容は、
武術での構え、技の“間”や“重み”にもつながる話ばかり。
私は日本舞踊も学んでいるのですが、舞台上での“美しい立ち方”や“無理のない張り”を求める感覚も、この本に書かれている内容と一致していて、まるでひとつの流れのようでした。
繊細な体の操作を言葉で導いてくれる本
本書のなかには、実際に張力を感じるためのワークや、体の内側のイメージワークも多く紹介されています。
「筋力を抜く」 「骨で立つ」 「空間を通す」といった言葉をよく聞いても、
実際には何を意識すればよいのか分からなかった私にとって、
とても実践的で、なおかつ美しく、丁寧に書かれている素敵な本でした。
武術、舞踊、舞台、演劇、ダンス──
表現や動きの世界に関わる方には、ぜひ一度読んでいただきたい一冊です。
