“Knowing is not enough; we must apply.
Willing is not enough; we must do.”
― Johann Wolfgang von Goethe
「知っているだけでは不十分だ。応用しなければならない。
望んでいるだけでは不十分だ。行動しなければならない。」
この言葉は、ブルース・リーの名言として武術界ではとても有名ですが、
実はもともとドイツの詩人ゲーテの言葉が由来です。
読書家としても知られるブルース・リーが、
こうした深い哲学にふれていたことに、彼の教養の深さを感じます。
この言葉を、私は詠春拳を始めたばかりの頃、師父から教えて頂きました。
新しい体の使い方や力の流し方に夢中になり、
関連する本や古今東西の武術家の自伝、武道のトレーニング本を読み漁っていたころ。
師父のセミナーでも、私は毎回質問ばかりしていました。
まるで子どものように好奇心いっぱいで、
それが自分なりの「修行」だと思っていたのです。
そんな私に師父が伝えてくれたのが、まさにこの言葉でした。
知っているだけでは足りない
本を読むことで得られる知識は確かに宝物です。
でも、いくら読んでも、体が覚えていなければ技にはならない。
言葉だけを追いかけていた私は、
その言葉を聞いた瞬間、ハッとしたのです。
それから私は、黙々と型を繰り返すようになりました。
シンプルな動きを何度も、何度も。
すると少しずつ、本で読んだことが、体の感覚と結びついていきました。
「知っている」から「できる」に変わっていく感覚が、
やっと自分の中に芽生えてきたのです。
知行合一――東洋と西洋に共通する「実践の哲学」
このゲーテの言葉は、東洋でいう「知行合一(ちこうごういつ)」にも通じます。
陽明学におけるこの考えは、知ることと行うことは本来ひとつという意味です。
頭で理解したつもりでも、動かなければ何も始まらない。
やってみて初めて気づくこと、感じられることがある。
これは武術に限らず、絵を描くことや日々の暮らしにも言えることだと思います。
おわりに|学びは手と足で深まっていく
「知っている」だけで満足してしまう時期が誰にでもある。
でもそこに気づいたときが、本当のスタートなのかもしれません。
学んだことを一度体に通してみる。
繰り返しの中で気づいたことが、やがて自分の「型」になっていく。
この言葉を教えてくれた師父に、
そして今もなお、実践の意味を教えてくれる詠春拳に、
あらためて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
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