武術を学び始めてから、「本当に強いとはどういうことか?」と、何度も自分に問いかけてきました。
そんな私の心に強く響いたのが、木村達雄さんの著書『透明な力』です。
この本は、大東流合気武術の達人・佐川幸義先生の言葉と生涯をまとめた貴重な記録です。
その内容は、単なる「武道の紹介」ではありません。
まさに、武術の奥深さ、精神性、そして人としてのあり方にまで踏み込んだ珠玉の一冊でした。
「強さ」とは、ただ技が上手いことではない
佐川先生の教えで特に印象的だったのは、
「強くなりたければ、常に考えること。考えて考えて考え抜くこと。」
という言葉。
これは、武術に限らず、どんな道を歩む人にも響く言葉ではないでしょうか。
私は今、詠春拳の型「小念頭(Sil Lim Tao)」を毎日繰り返していますが、ただ動きを真似るだけではなく、「なぜこの動きがあるのか?」「どこに力が通っているのか?」を考えながら練習しています。
この本を読んで、その姿勢は間違っていなかったと背中を押してもらった気がしました。
見て学び、自分で掘り下げる
読んでいて、最もハッとさせられた一文があります。
「一度見た技は教えてもらったことと同じ」
この言葉に、思わず姿勢を正しました。
なんでも「教えてもらおう」と受け身になるのではなく、自分の目で観て、感じて、考えて、技を自分のものにする姿勢。
それが本当の意味での「学び」であり、「武術を修める」ということなのだと気づかされました。
この考え方は、私の日々の稽古にも、イラストの制作にも通じるものがあります。
見たものをどう受け取り、どう自分の中で咀嚼していくか。その姿勢を改めて大切にしたいと思いました。
達人は天才ではなく、努力の人
もちろん、佐川先生には生まれ持った資質や才能があったことは間違いありません。
しかし、この本からはそれ以上に、常人には想像もつかないような努力と執念が読み取れました。
- 技を何度も繰り返し、研究し、観察し尽くす。
- 素振り一つにしても「今日は何回振るか」ではなく、「どう振るか」を突き詰める。
- 数十年をかけて、自分の身体を実験場にし続ける。
そんな修行の日々が、佐川先生の「透明な力」を形作っていたのだと思います。
読み終えて──武術の道に生きるすべての人へ
『透明な力』は、武術の修行者だけでなく、武道を愛するすべての人に読んでほしい一冊です。
実際の技法については多く語られていませんが、その「根っこ」の部分──武術の精神、稽古の意味、師と弟子の関係、そして人間の在り方について、深い示唆を与えてくれます。
小念頭を繰り返す日々の中で、ふと迷いそうになるとき、私はこの本をまた手に取りたくなると思います。
まさに、私にとっての“武術の灯”となる一冊です。
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武術や身体感覚に興味のある方におすすめの一冊です。詠春拳を学ぶうえでも、大きなヒントになると感じました。